
店舗物件を借りるときは、初期費用として保証金・敷金などを支払うケースが多くあります。一般的な住宅の初期費用とは相場が異なり、高額になることもあるため、事前の確認や資金の準備が大切です。
この記事では、テナント契約における保証金・敷金の相場や、退去時に返還される金額の目安に加え、保証金・敷金の注意点について解説します。
┃目次
┃保証金とはテナント契約をするときに貸主に預ける費用のこと
保証金とは、貸主が負うリスクを軽減するために、契約時に借主が貸主に預ける初期費用のことです。貸主が負うリスクには、家賃債務の担保や原状回復費用などが含まれます。保証金はあくまでもリスクに備えて預ける費用で、商品やサービスの対価として支払うものではありません。
保証金と同様の意味を持つ言葉に「敷金」があります。敷金も保証金と同様に、貸主のリスクを軽減するための費用です。住宅を借りる際は、借主から貸主に対して敷金を預けるのが一般的です。テナント物件では、敷金の代わりに保証金という言葉が使われますが、物件によっては敷金という名目でお金を預ける場合もあります。いずれにせよ、意味は変わりません。
なお店舗物件では、借主が退去時に店舗の原状回復工事を行います。そのため通常の退去であれば、保証金・敷金が原状回復工事費用に充当されることはありません。保証金・敷金は、退去時に返還されるのが一般的です。ただし全額が返還されるとは限りません。保証金・敷金の返還については後述します。
テナント料については、下記の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
┃保証金・敷金の相場
保証金・敷金の相場は、一般的にテナント料の2~10ヵ月分程度です。例えばテナント料が20万円の場合、保証金または敷金は40万~200万円程度が目安になります。さらに繁華街や駅前のエリアにあり、多くの集客が見込める人気物件では、テナント料の2年分といった保証金・敷金を設定している場合もあります。
目安の金額にも大きな開きがあるため、余裕をもって資金を用意しておくと安心です。
┃保証金・敷金と礼金の違い
テナント物件を契約する際の初期費用には、保証金・敷金のほかに、礼金もあります。
礼金とは、テナント契約した際に貸主に対するお礼として支払う費用のことです。礼金を支払う慣習は、戦後に始まりました。住宅が不足する厳しい時代に、貸主に感謝の意味を込めてお金を包んでいたことが由来といわれています。
礼金はあくまでもお礼のため、退去時にも返還されません。テナント料の1~2ヵ月分である場合が多いでしょう。
┃退去時に返還される保証金・敷金はどのくらい?
テナント物件では、退去する際に保証金・敷金が返還されます。基本的に全額返還されますが、借主に債務がある場合や、契約書に償却分の記載がある場合は、該当の金額が保証金・敷金から差し引かれます。
契約書に「退去時に債務の不履行がある場合は保証金によって弁済する」と記載がある際の「債務」とは、多くの場合、テナント料のことです。テナント料を滞納した場合、保証金・敷金から差し引かれます。また水道光熱費を貸主に支払うタイプのテナント物件では、水道光熱費の滞納分も債務に該当します。
さらに退去時に原状回復が正しく行われていない場合や、契約書に「原状回復工事費用には保証金を充当する」といった記載がある場合は、保証金・敷金から原状回復費用を差し引かれることもあるでしょう。
なお上記のような債務がなくても、保証金・敷金の全額が返還されないケースもあります。契約書に「退去時に、保証金から償却費として◯%相当額を差し引く」または「償却費としてテナント料◯ヵ月分を差し引く」といった記載がある場合は、該当の金額が保証金・敷金から差し引かれます。
┃保証金・敷金にまつわる注意点

保証金・敷金については、トラブルを防ぐためにも正しく理解することが大切です。ここでは保証金・敷金にまつわる注意点をご紹介します。
保証金・敷金は原則一括払い
テナント契約の保証金・敷金の支払いは、原則として一括払いです。分割払いなどは基本的にできません。
テナント料の10ヵ月分といった高額な保証金・敷金が必要になることもあるため、事前に金額を確認して用意しておきましょう。
テナント料の滞納分をまかなえるわけではない
テナント料を滞納している場合、保証金・敷金で充当できるわけではありません。退去時の滞納分は、保証金・敷金から差し引かれますが、これはあくまで債務の清算です。
保証金・敷金を預けていたとしても、テナント料は毎月必ず支払いましょう。
返還のタイミングは遅くなるケースもある
保証金・敷金は、退去時に返還されますが、場合によっては遅くなることもあります
保証金・敷金が返還されるのは、テナント契約が終了して、契約内容に合致する状態で物件を引き渡した後です。例えば「契約期間を終了したが、原状回復工事が行われていない」「残置物が残っている」などの問題が生じた場合、保証金・敷金は、問題が解決するまで返還されません。
なお保証金・敷金は、債務を差し引いた金額を下記のタイミングで返還しなければならないと、民法で定められています。
<保証金・敷金が返還されるタイミング>
賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき
賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき
つまり貸主が保証金・敷金の返還をするのは、物件の状態に問題がないことを確認した後です。具体的な時期については契約書に明記されていることも多いため、貸主に確認しましょう。
※e-Gov法令検索「民法 第六百二十二条の二」
退去時は追加費用が発生する可能性もある
退去時に債務があり、保証金・敷金で清算しきれない場合は、追加の支払いをしなければなりません。また原状回復費用に保証金・敷金を充当する契約では、原状回復費用が保証金・敷金を上回るケースもあります。その場合、追加費用の支払いを求められるでしょう。
契約内容や債務の状況によって、退去時に保証金・敷金の返還を受けられるのか、追加の支払いが必要なのかが決まります。
┃保証金・敷金の返還額を多く残すためのポイント
退去時に返還される保証金・敷金は、次の店舗の運営や事業の清算などに役立ちます。できるだけ多くの金額を返還してもらうために、下記のポイントを意識しましょう。
契約書の内容を隅々まで確認する
テナント契約を締結する際は、初期費用や月額費用のほか、退去時の保証金・敷金の取り扱いについてもしっかり確認しましょう。保証金・敷金の返還額は、契約内容によって左右されます。
保証金・敷金について、最低限確認しておきたい点は、下記の通りです。
<保証金・敷金にまつわる契約書の確認点>
保証金・敷金の償却の有無
保証金・敷金の償却がある場合の割合や金額
借主負担で行う原状回復の範囲
原状回復費用の支払い方法(保証金・敷金から相殺するのか否か)
保証金・敷金の返還期日
そのほか保証金・敷金の返還や充当に関する特約
契約時の物件の状態を記録する
テナント契約をした際は、入居時に物件全体や気になる部分を撮影して記録しておきましょう。特に入居時からあった傷や汚れについては、写真を残しておくと安心です。原状回復工事は、あくまでも契約時点の状態に戻す工事のため、入居時からついていた傷や汚れは原則として対象になりません。支払う必要のない費用を負担したり、退去時のトラブルになったりすることを避けるためにも、記録を残しておくことが大切です。
入居中はこまめな清掃を心掛ける
テナント入居している間は、こまめな清掃を心掛けてください。十分に清掃を行わないと、長年の汚れがこびりついて原状回復にお金と手間がかかる可能性も高まります。また破損などの不具合を放置すると、問題が広がるおそれもあるでしょう。
こまめに手入れをすれば、原状回復費用を押さえたり、保証金・敷金の返還額の目減りを防いだりすることができます。
┃テナント契約時は保証金・敷金の扱いについて確認しよう

テナント契約では、テナント料の2~10ヵ月程度の保証金・敷金を初期費用として支払うのが一般的です。通常は退去時に返還されますが、一定割合を償却されたり、債務の弁済に利用されたりすることもあるため、注意しなければいけません。
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